稲刈り

kamome2003-10-09

子どもの頃、母方の田舎に預けられると、怖いじいさまが農作業を手伝えと言う。春は泥の中に足を突っ込んで田植え。ヒルにめいっぱい血を吸われザリガニにはさまれる。秋は稲刈り、それも鎌を砥石で研ぐ所から始まる。井戸で水をくみ上げ、何十年も使い続けて真ん中がへこんだ砥石に刃を当てる。稲刈りは意外に楽しい。切り取った束をさらに束ねて干す。それから脱穀。庭じゅうに筵を広げて籾殻にまみれての作業。終わった頃には、ばあさまが握ったにぎりめしが待ってる。思い起こせば幸せな日々だった。裏庭の鳥小屋にタマゴを拾いに行き、あつあつのタマゴご飯が朝飯だった。海へ散歩に出れば、シラスが干してあって味見をさせてもらったし、川に行けば釣ったばかりのアユを土産に貰った。あれはひょっとしたら桃源郷だったのかもしれない。自分で耕し自分で収穫し、満腹になったら横になり、日が暮れたら眠る。虫や鳥や獣達とはだしで遊び、美しい花や木の実に見とれた。許されるならば、あの頃のあの時代に戻りたい。