日記を書くという習慣は、自分の中にはなかった。19才の頃、大学ノートの分厚いやつに、その頃はやってた歌の歌詞を書いているうちに、日付のあるメモを残すようになった。だんだんそれがエスカレートしてきて、ちょっとしたエッセイから、しまいには短編…

悲しいこと

自分の口から、人の心を傷つける言葉を発してしまったこと。思いやりの無い直截的な言葉を。自分をコントロールすることができなくなっていることに気がつかない日常。水族館の水槽の底に沈んでしまいたい気持ち。仕事のせいにはしたくないが、かなり影響を…

こんな夢を見た。いりくんだ海岸線の砂浜で、凧揚げをしている。凧はカモメの形をしていてよく揚がる。近所のカモメたちが近づいてきてはあたりを旋回している。凧の糸をクイと引いて、カモメたちを驚かせて楽しんでいる。心当たりのある昔々の風景。あの頃…

こころここにあらず

それは読書の時だったり、音楽を聴いている時だったりあるいは電車に乗っているときだったりするのだが、意識が別の所を彷徨っていることがある。時計の針だけが傾き、ぽっかりと意識だけが抜けている。あれ、今何を考えていたんだっけ・・・自問自答するの…

それからさきのことは

日めくりカレンダーをめくるように、毎日が過ぎていく。はらりはらりと過ぎ去っていく。このままでいいのだろうか。まるで青春の真っ只中にいるような疑問符がわいてくる。いくつかの曲がり角を過ぎてもう、後戻りなど出来ない所まで来てしまっている。一度…

稲刈り

子どもの頃、母方の田舎に預けられると、怖いじいさまが農作業を手伝えと言う。春は泥の中に足を突っ込んで田植え。ヒルにめいっぱい血を吸われザリガニにはさまれる。秋は稲刈り、それも鎌を砥石で研ぐ所から始まる。井戸で水をくみ上げ、何十年も使い続け…

ドッペルゲンガー

もう一人の自分の存在。昔何かの本で読んだ記憶がある。この世の中にはもう一人の自分が存在していて、稀に出くわすことがあるらしい。これだけ日本中を廻っていれば、そろそろ出くわしても良さそうなものだが・・・。何がしたいかというと、もう一人の自分…

自然

考えてみれば、子どもの頃にめいっぱい田舎で育った。町の子が経験しないような山や川や海で遊んだ。遊んだというより生活したといったほうが正しい。7月の下旬から8月の下旬までまるまる一ヶ月、祖父のもとに預けられた。この祖父が元生物学者という変わり…

酔い方

日本酒・・・これはだめだ。酔うほど飲んでしまうとまず頭が痛くなる。味わう分には魚には特に相性が良いのだが、とにかく二日酔いになる確率は80%。ウイスキー類・・・これもあまり得意じゃない。気分が悪くなる酔いが多い。学生時代の安い水割り経験が…

少年の日

少年犯罪が多発している日々、ふと自分の少年の頃を振り返る。ネコをいじめた・・・ミノムシを潰した・・・小さな残虐行為の種は誰の心の中にも存在するのではなかろうか。パンドラのはこを閉めてある留め金が緩み始める。開けてみたい誘惑に勝てない時間が…

紫陽花

梅雨の雨だれとともに、元気よく咲くのが紫陽花。ぬかるんだ公園を歩きながら、そのさわやかな姿に目を奪われる。昔より種類が増えたのは西洋アジサイが入ってきたせい。生命力の強い西洋植物は日本の土壌を好み繁殖する。特にセイヨウタンポポ、セイタカア…

ふるさと

故郷ってどこなんだろう・・・・生まれた土地?育った町?生活している街?「ふるさと」という想いを込めた言葉には、思い出が関わっている気がする。私自身も北国で生まれ、南国で育ち、都会の近くに巣を設けた。そのすべてが故郷なのかもしれない。そして…

無くなる

この世からいなくなった人のことを聞いたとき、ああやっぱりと瞬間的に思った。日記の内容がどんどん枯れていき、生気を失い、書くことを止めてしまったのかとも思っていた。ある瞬間、彼女は光りを見失ったのだと思う。そして闇のほうへ飲み込まれてしまっ…

思い

なにかのはずみで遠い記憶を思い出すことがある。それは風にさらわれた花の香りだったり、道端の空き缶だったりする。想い出に浸る時間が楽しく感じられるのは、もう人生の後半にさしかかろうとしているせいなのか。日々想い出を作りながら、ここまで生き延…

旅が長期化するほど荷物が増える。重い荷物を担いでの旅は精神的にも疲れる。大きな車輪付きの鞄にしようかと思い始める。ところが旅なれた人は逆の発想をする。荷物を減らす。着替えは下着だけ、あとは現地でクリーニング。土産は極力買わない。必要なもの…

ゴミ

大事に段ボール詰めした資料が、数年立つとただのゴミになってしまう不思議は毎度のことだ。何故こんな資料を詰めたんだろう?疑問符が頭の上を旋回する。そして、今回詰めた資料のことを思い浮かべる。やっぱり捨ててしまおうか・・・ところがマーフィーの…

甘いもの

お菓子という存在とはあまり縁が無い。家庭にいても間食をする習慣が無いので、お茶菓子を出されてもお茶しか飲まない。昔、遠足の時おやつを200円持ってきていいといわれ、悩みぬいた記憶がある。何故か昔から、お菓子というより酒のつまみみたいなのが…

春だから

季節が変化するごとに気分も変わるから、日本人にはとても大切な四季。春だから、着るものを軽くして、食べるものをあっさり系にして、散歩コースを変更して、ドライブの時は窓を開けて、日本酒をビールにして、髪型を短めにして、etc.あんなに好きだった人…

恋愛感情

某所で友人関係と恋愛関係の決定的な違いはエロスの存在であるとあった。相手を思い慕う、側にいたいと思う、触れてみたいと思う、そして唇を重ねてみたいと想い、体を合わせてみたいと思う。そうやって恋愛感情は向上し、また下降していく。側にいてみたい…

運転

自動車の運転が好きだよねえ、あなたは。と妻に言われる度に、そうかなと自問する。好きなのではなく面倒くさくないのである。無意識に運転することができるので生活の邪魔にならない。考え事も、食事も音楽を聞くことも車の中でできる。あ、睡眠も。これは…

性格

幸いにして、いたって平凡な家庭に生まれたものだから、のびのびと育った。一つ難点といえば両親の夫婦仲が極端に悪かったこと。血液型はAとB、生まれ年はイヌとサル。気が長いのと気が短い組み合わせ。とにかく何をするにもことごとく対立しケンカしてた…

うつらうつら

新幹線のリクライニングシートで日向ぼっこをする。この上ない贅沢だと思う。文庫本が左手首に重くなってくると、自然に上のまぶたと下のまぶたが逢引をはじめる。うつらうつら夢見ごこちを楽しむ。スピードに慣れてきたせいか、東京=名古屋間が短く感じる…

二日酔い

酒量を抑えるようになったのは四十歳を過ぎた頃からだったろうか。もちろん酌み交わす相手によっては、羽目を外すこともある。それは楽しい酒盛りに限る。接待という名目の酒宴は、精神が酔えないので終了時にやってくる酔いに襲われたときが一番あぶない。…

ことのは

気がついたら大学ノートの片隅に詩篇を編んでいたりした。青臭い感情を剥き出しにしながら、いくらでも書けた。大学の先輩に誘われて同人誌を立ち上げた。年に一回は簡易印刷で出版もした。そのためにアルバイトにも精を出した。アルバイト代はほとんど飲み…

豆まき

2月3日は月曜日。その日も遅くまで仕事、そのうえ銀座にディスプレイの手直しに行くことになった。携帯が突然鳴る。それも次男から、珍しいこともあるものだと用件を聞くと、豆まきの鬼が帰ってこないことには、本当の豆まきができないという。どんなに早…

デスクワーク

結局、デスクワークが好きなんだと気づいた。このわずか145cm×74cmの平面がとても居心地がいいんだと。昔は原稿用紙とレイアウト用紙と、Bと2Bの鉛筆、赤鉛筆、定規、レイアウト定規、消しゴム、羽根等などが転がっていたのに、この頃はそれらが…

足跡

いざ違う場所で日記を書こうとすると、キーボード上の指がうまく動かないのは何故だろう。字数制限のある所で書き続けたせいだろうか。書きたいことを反芻して殺ぎ落としていくと、まったく違う意味合いになってしまうことがある。文章って不思議だ。まして…